そして水木が出会う謎の男――まぁ、鬼太郎の親父なんですが細目なのにパワーファイターでそのギャップもサプライズ。 なんでこんな優男が原作の鬼太郎の誕生編で包帯ぐるぐる姿になっていたのかもこの映画で明かされます。 しかし本当に人は醜い、酷い。 酷すぎる。 あんな背景があるにも関わらずよく鬼太郎親子は人類に対して友好ないし中立的な態度を取れると思う。 人間の自分ですらあんなのを見せられたら人間を滅ぼしたくなるのに。 もし自分が妖怪であの場所にいたら間違いなくあの村の連中を鏖殺しています。 そもそもあの場所に人間なんてひとりもいなかったんだよ――。 by仙水忍

兵士として戦争の理不尽さを経験し、貧困の苦しみ、惨めさを身を以て経験したがゆえに強者になろうと欲した水木が強者になるよう誘惑してきた相手を「つまらん奴だな」と一蹴したシーンは本当に大好き。 満身創痍となり追い詰められても最後の最後で己の意地を通す姿は美しい。 ラスボス的な妖怪とは別に物語の黒幕とも呼べる巨悪が出てくるのですが、こいつがとにかく醜悪で憎たらしい。またキャラクター的に私の考える〝こんな悪役ぶっ倒したい〟に見事に当てはまるんですよね。

実際改めて人の救いようの無さを感じましたよ。 美しい自然にかこまれた、一見すると平和でのどかな哭倉村。 しかしそこに隠されていた因習はまるで江戸川乱歩や夢野久作の書く世界のよう。 現代にも通じる人間の愚かさを描く場面など、日本人の精神構造は戦中戦後から何も変わっていない、それは令和の世も同じ――的な社会批判が込められているように感じ、ぐっときました。

そこには社長の指示によりある秘密の存在を探る目的があった。 水木はそこで飄々とした謎の男と出会い、龍賀一族のおぞましく忌まわしい秘密を知る事となる――。 こちら2023年11月に公開された作品を327カットのリテイクに合わせて音も再録音した〝真生版〟となります。 制作陣が当初思い描いていた恐怖の物語が銀幕に映し出されました。 と言っても正直どこがどう変わったのか気づきませんでした。真生版上映記念冊子によるも主に血の表現、量だそうですが、この作品てそういうスラッシャー的な部分よりも人の愚かさ、おぞましさ、醜さを描いているでしょう？

クライマックスのどこまでが現実でどこまでが悪夢なのか、夢から覚めたのか覚めていないのか、悪夢の世界に囚われてしまったのかと混乱する構成は実に素晴らしい。こういうの好き。 遊び心いっぱいのおもしろこわいホラーの逸品。 悪魔憑きの少女リリー役のイングリッド・トレリちゃんもかわいい。 観てください！

作品自体が70年代アメリカのTVショーを再現している体裁で、見る者を〝ヤバい深夜番組〟に引き込む仕掛けがお見事。 映像の粗さやカメラ割りも巧みで、実に〝っぽい〟感じ。 軽妙な語り口で会場を沸かすジャックのキャラクターが絶妙。フィクションとわかっていても悪魔憑きの少女のとこかおかしい所作や表情にかすかな恐れと不安を抱かされる。 『キャリー』や『エクソシスト』などの往年のホラー作品へのリスペクトあふれる演出にもニヤリ。

そんな低迷する視聴率のテコ入れのために再熱中のオカルトムーブの流れに乗って悪魔に憑かれたという少女リリーを生放送で招くという起死回生のオカルトライブを企画する。 スタジオでは超常現象が次々と起こり、視聴率は過去最高を記録するものも思いもよらぬ惨劇が巻き起こる事に――。 こちら封印された米国のとあるTVショーのマスターテープに映された番組とは――という内容のファウンド・フッテージ（怪異に遭遇した撮影者が残した映像、モキュメンタリーの一種）ものとなります。

世の中は年中三月常月夜、嬶十七俺二十、負わず借らずに子三人。

非風非幡。

ドリンクバックのある飲み屋で働けば儲かりますよ！