職場は基本的にWindowsだが、オルタナティブとしてMacが一台だけある。それがかなりヘタってきたので、わたしが使わなくなったMac miniをフォーマットして寄贈することに。バックアップをとって初期化して…の間に、日本からワンストップMNPの助っ人を頼まれ、オンラインで助けていたところ、来墺邦人から現地SIMヘルプの連絡が入る… こういうマシン関係の並行作業なら楽しみながらできるんだが、本業のほうはそこまで余裕がないのが情けないなあ…とつくづく思う。本業はいつまでたっても素人。

職場のOffice365、新しくなったリボンの設定があまりに使いづらくて、ブチ切れそうになっている。 アドオン機能を使って以前のリボン表示にできないかと思ったら、職場側でアドオン設定ができないようになっているという腹立たしさ…これぞリボンの希死（って言ってみたかった）

あ、あと『クィア・ブダペスト』も読了したので、もう少し考えてからいずれまた簡単にまとめようと思っている。意外とあっさり終わった…あとは注釈と参考文献から次に読めそうな資料を抽出していこうと思う。

とはいえ、ふんわりほがらかな「バディ」となったフローとグレイのコンビを舞台上に見るのは、原作を何度も読み返したわたしにとってはなんだか嬉しく、ご褒美をもらったような気分になれたことも確かだ。 少年・青年漫画誌のコマという枠のなかから、今・ここを変え得ない範囲内での自由というガラスの箱のなか（劇場）へ、ひとつの物語を移植するという作業が現在いかになされるかということを見届けた。

四季では「実は女性であったが男装の剣士となった」「女性であることは呪いだ」と言うキャラクターに変えられているのも大きな変更点だ。フローを守るためにグレイがデオンと戦い、グレイが勝つ…という筋書きが、女性のエンパワーメントを軸とした原作といかに離れているかということは、言うまでもない。

わたしとしては、この作品の原作から四季版への変容が、『エリザベート』のウィーン版から日本の歌劇団版への変容に似ていると言いたいところだが、それを始めてしまうと終わらないので、指摘だけに留める。 また、原作版では「男でもあるが、女でもある」とグレイに言われ、その願望の姿が女性であったため、女性のゴーストとなったシュヴァリエ・デオンが…

つまり、女性が自己を主張し、そのことが社会を変えていく力となるという「黒博物館」シリーズのメッセージは滅菌され、フローとグレイの信頼ないし恋愛関係というところに主軸がおかれる。それはキャラクター性を重視すればそれぞれのキャラクターに「推し」がつきヒットが約束されるという現在のエンタメ法則の適用にもつながる。

そのため、フローの命をはった家族への啖呵は、四季ではグレイの不思議な力によって相手の反発感情がいきなり消えてしまった…という表現になってしまう。原作ではフローの気迫が主で、グレイはただ影（生霊）を切っただけ、つまりはフローの鬼気迫る、狂気に近い自我の主張こそがグレイを動かしたというところにこそ物語の核があると思うのだが…。

わたしは原作シリーズは、女性のエンパワーメントが主軸となっていると思っているが、四季の「現在を生きている人々が、この生は生きるに値すると実感できるように」という基本コンセプトは、原作の持つ「自分がじぶんとして生きるために、この世界をグーパンで殴りつける」という破壊力とは大変相性が悪い。四季はあくまでも「今・ここ」の再承認がゴール地点なのだから。

劇団四季『ゴースト＆レディ』観劇。 劇団四季を観たのは、多分20数年ぶり。『黒博物館』シリーズを愛読している立場から、それがどう箱に合わせてアレンジされているのかということを確認しておきたいと思い、観ることに。少年・青年という受け手を想定した漫画作品、それも編集主体ではなく作者の意思が重視される立場にある作家の作品が、四季という広範な受け手をもつ劇団によってどう作り変えられるか。